Chapter2 建設工事と請負・下請契約について 建設業の法務・労務

建設工事請負契約書

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■契約締結にあたっての見積りには注意する

ガイドラインのところでも若干触れましたが、見積りについては、以下のような場合には、建設業法20条3項違反となるおそれがありますので注意を要します 。

①元請負人が不明確な工事内容や契約条件など暖昧な見積条件の提示によって、下請負人に見積りを行わせた場合
②下請負人から見積条件の質問を受けた際、元請負人が未回答あるいは暖昧な回答をした場合
③たとえば、予定価格が1000万円の下請契約を締結する場合、元請負人が見積期間を5日として下請負人に見積りを行わせた場合

見積条件を提示する際には、工事内容、条件が明確に提示されなければなりませんし 、見積書作成の期間が十分確保されていなければなりません。見積期間については、以下のように定められています。

ア 工事1件の予定価格が500万円に満たない工事については1日以上
イ 工事1件の予定価格が500万円以上5000万円に満たない工事については10日以上
ウ 工事1件の予定価格が5000万円以上の工事については15日以上

上記基準によれば、③の1000万円は、イに該当し、10日以上の期間を与えなければなりませんので、建設業法違反となります。なお、ここで示されている日数は、最低日数であり、「中10日以上」ということです。つまり、見積条件等の提示のあった日の次の日から10日以上で、見積書提出日は含まれません。
また、予定価格がイ、ウの工事については、やむを得ない事情があるときに限り、見積期間をそれぞれ5日以内に限って短縮することができます(建設業法施行令6条1項、ただし書 。

■請負契約書にはどんなことを記載するのか

契約書面には建設業法で定める一定の事項を記載すること必要です。契約書面に記載しなければならない事項は、以下の①〜⑭の事項です。特に、「①工事内容」については、下請負人の責任施工範囲、施工条件等が具体的に記載されている必要が あるので、「00工事一式」といった陵昧な記載は避けるべきです。工事内容については、少なくとも次の8項目について記載する必要があります。

① 工事内容
ア工事名称、イ施工場所、ウ設計図書 (数量等含む)、エ下請工事の責任範囲、オ下請工事の工程及び下請工事を含む工事の全体 工程、カ見積条件及び施工種の関係部位、特殊部分に関する事項、キ施工環境、施工制約に関する事項、ク材料費、産業廃棄物処理等に係る元請下請間の費用負担区分に関する事項
② 請負代金の額
③ 工事着手の時期及び工事完成の時期
④ 請負代金の全部又は 一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
⑤ 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事
の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の 変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算 定方法に関する定め
⑥ 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の 負担及びそ の額の算定方法に関する定め
⑦ 価格等(物価統制令2条に規定する価格等をいう の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
③ 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
⑨ 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
⑩ 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
⑪ 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
⑫ 工事の目的物の暇抗を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
⑬ 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅 延利息、違約金その他の損害金
⑭ 契約に関する紛争の解決方法

■建設工事標準請負契約約款の活用

建設工事の請負契約の内容に不明確な点があると、後日報酬金額などをめぐってトラブルが生じる可能性があります。
このような事態に備えるため、国土交通省は契約で規定すべき事項
を「建設工事標準請負契約約款」(標準約款)として公表しています。標準約款には、公共約款 、甲約款、乙約款、下請約款の4種類があります。公共約款は公共工事や電力・ガス・鉄道・電気通信等の常時建設工事、甲約款は民間の比較的大きな工事、乙約款は個人住宅などの民間の比較的小さな工事、下請約款は下請工事を対象としています。

■追加での発注が生じた場合には契約を変更するのか

追加工事等の発生により請負契約の内容を変更するときは、追加工 事等の着工前に、変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければなりません (建設業法19条2項) 。
もし、着工前の時点で、「追加工事等の全体数量等の工事内容が確定できない といった事情がある場合、元請負人は、①下請負人に追加工事等として施工を依頼する工事の具体的な作業内容 、②当該追加工事等が契約変更の対象となること及び契約変更等を行う時期、③追加工事等についての契約単価の額、を記載した書面を作成し、着工前に下請負人と取り交わします(建設業法令道守ガイドライン 2 - 2よ り)。この場合、追加工事等の内容が確定した時点で、遅滞なく契約 変更等の手続を行うようにしなければなりません。
なお、元請負人が、合理的な理由がないにも関わらず、追加工事に関する契約変更を行わない場合や、追加工事等の費用を下請負人に負担させることは 、建設業法19条2項、19条の3に違反します。

■下請企業や孫請企業との契約ではどんなことに気をつけるのか

下請業者等との契約においては、前述した建設業法の規定やガイドラインに留意して作成、締結することが必要です。その他、労働基準法、労働安全衛生法などの労働関係法令、独占禁止法など関係法令にも注意しなければなりません。偽装請負で処罰された場合、現行の建設業許可が取り消され、5年 間は建設業許可が受けられなくなりますので、注意が必要です 。
製造業者の工場の建設などの場合、製造ラインや工作機械の配置など企業の重要な秘密に触れることもあります。また、オフィスビルの内装工事ーなどであっても、防犯上の重要な’情報に触れることがあります。このような場合、元請業者としては、情報管理統制上、下請等の建設業者などの使用は控 えるべきです。しかし、やむを得ず下請業者を使う場合は、これらの下請等の建設業者との下請契約の中に、厳しい秘密保持義務や情報管理の秘密保持条項を規定しておく必要があります。

■印紙税を貼付する

印紙税とは、文書にかかる税金です。どのような文書が課税の対象になるかは、「印紙税法別表第一」(課税物件表)に示されています。課税物件によ って分けられ、1号から20号まで全部で20種類あります。この印紙税法上、印紙税が課税される文書を課税文書といいます。請負に関する契約書は、第2号文書として課税文書に該当します。印紙税は収入印紙を貼付する方法で納付します。請負契約に該当する場合は、貼付する印紙は契約書に記載された契約金額によって異なります。
なお、建設工事請負書など、一定の契約書については、印紙税の課税にかかる不公平感がなくなるよう本来の税率より軽減された軽減措置が定められています。この契約書の対象とな る建設工事とは、建設業法2条第1項に基づいており、具体的には以下の工事をいいます(建築物の設計や建設機械に関する契約書等は軽減措置の対象となりません 。

土木一式工事、建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋 根工事、電気工事、管工事、タイル ・れんが ・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、ほ装工事、しゅんせつ工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事 、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施 設工事、清掃施設工事

なお、収入印紙を貼 ることが義務付けられている文書に収入印紙を貼っていない場合、印紙税法上は脱税として過怠税が課されます。過怠税の額は、納付しなかった印紙税の額に加え、その2倍に相当する 金額、つまり当初に納付すべき印紙税の額の3倍です(調査を受ける前に、自主的に不納付を申し出たときは、過怠税は 1.1倍に軽減)。
ただし、印紙税の貼付を忘れたとしてもその文書や契約書自体が無効になるわけではありません。

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