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技術者制度
■技術者制度とは
建設業における製品は、発注者の注文により、各々が異なる、いわゆる「一品受注生産」です。そのため、あらかじめ品質を確認することは不可能です。また、中途で不良な施工や製品自体の欠陥が発覚しても、それを完全に修復することは難しく、完成後、不良施工や欠陥の有無を確認することはさらに困難であるなどの問題点があります。
また、施工に関しても、下請業者をはじめ多くの関係業者による総合組立生産方式であり、また現地屋外生産であることから天候等の工程管理が必要になります。良質な施工のためには、これらを総合的にマネジメントすることが必須といえます。
他方、社会的な観点から、建設業者は、良質な社会資本を整備するという役割を担っており、発注者は、建設業者の施工能力を信頼し発注しています。
しかし、発注者の期待を裏切り、信頼を損ねる不良施工等があれば、施工会社だけでなく、建設業界全体の信頼性が揺らぎ、建設市場は危うくなります。そのため、建設工事の適正かつ生産性の高い施工が確保されることがたいへん重要です 。
こうした優良な施工を行うためには、建設業者の組織として、また個人としての技術力が相乗効果を果たす必要があります。
そこで国は、不良施工などを防ぎ、建設工事の適正な施工を担保するため、適切な資格、経験等を有する技術者を工事現場に設置することにしました。
■営業所に設置する専任技術者とは
建設業法は、許可を受けて建設業を営もうとするすべての営業所に、専任の技術者を置くことが義務付けています(7条2号、15条2号)。
建設業の営業(見積、入札、請負契約締結等)は、通常は各営業所で行われるます。そこで、営業所ごとに一定の資格、経験を有した者(専任技術者)を設置することで、請負契約の適正な締結や履行を確保しようしています。
専任技術者については 、建設業許可の業種(29種類あります)や、許可が「一般建設業の許可」なのか、「特定建設業の許可」なのかによって、資格や経験などの要件が次のように違ってきます。
① 一般建設業の許可を受けようとする場合
a 指定学科 (国土交通省令で定める学科)修了者で、高校卒業後5年以上又は大学若しくは高等専門学校卒業後3年以上の実務の経験を有する者(第 7条第2号イ該当)
b 許可を受けようとする業種に関し10年以上実務の経験を有する者(2号ロ該当)
c 国土交通大臣が、a 又はbの者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者(2号ハ該当)
d 許可を受けようとする業種について、一定の国家資格、免許等を有する者(2号ハ該当)
なお、aの「指定学科」とは、建設業法施行規則第1条で規定されている学科を指しており、許可を受けようとする建設業の種類によって指定されています (たとえば、建具工事業の場合は建築学または機械工学に関する学科)。
bの「実務の経験」とは、建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験を意味します(単に建設工事の雑務のみの経験年数は含まれません)。建設工事の設計技術者として設計に従事し、又は現場監督技術者として監督に従事した経験、見習い中の技術的経験等も含めて取り扱われます。実務の経験の期間は、1業種につき10年以上必要です。たとえば2業種について実務の経験がある場合には、最低20年以上の職務経験が必要となります。
ただし、この実務経験の期間については、実務経験を2年間緩和する措置があります。
② 特定建設業の許可を受けようとする場合
a 許可を受けよう とする業種について、一定の国家資格、免許等を有する者(15条2号イ該当)
b 一般建設業の要件のいずれかに該当し、かつ請負代金が4500万円 (消費税込みの額)以上の元請工事に、2年以上指導監督的な実務経験を有する者(2号ロ該当)
c 国土交通大臣が認定した者(2号ハ該当)
b の「指導監督的な実務経験」とは、建設工事の設計、施工の全般にわたって、主任技術者、施工監督、工事現場主任などの立場で工事の技術面を総合的に指導監督した経験をいいます。
営業所の専任技術者は、営業所ごとに「専任」の者を設置することとされています。それ故に、住所が勤務営業所から著しく遠距離で、常識上通勤が不可能な者、他の営業所(他社の営業所を含む)において専任している者など、専らその職務に従事することができないと考えられる者については、専任技術者として認められません。
ただし、次のような場合、営業所の専任技術者が工事現場に配置する配置技術者(主任技術者、監理技術者)になることができます。
①当該営業所において請負契約が締結された建設工事であること
②工事現場と営業所が近接しており、常時連絡が取れること
③所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること
以上の3点をすべて満たせば、専任技術者が、工事現場の配置技術者となっても、「営業所に常勤して専らその職務に従事」しているものとして認められます。ただし、この兼任配置は、例外的なものですから、極めて限定的に運用する必要があります。
■工事現場に設置する主任技術者とは
建設業法は、建設業者が元請、下請、あるいは請負金額の大小に関わらず、すべての工事現場に、施工の技術上の管理を担当する者として「主任技術者」を配置しなければならないと規定しています(26条1項 )。つまり、「主任技術者」は必置の制度です。
26条1項で、「主任技術者」は「第7条第2号イ、ロ又はハに該当する者」とされているので、前述の「専任技術者」で説明した資格要件と同様です 。
要するに、主任技術者となるためには、1級国家資格者又は2級国家資格者、実務経験者(実務経験10年以上。指定学科修了後、高校卒業後5年以上 、又は大学卒業後3年以上の実務経験を経たもの)のいずれかに該当しなければならないのです。
主任技術者は、「公共性のある工作物に関する重要な工事」については、その現場ごとに「専任」の義務が諜せられています(26条3項 「公共性のある工作物に関する重要な工事」とは、元請下請を問わず請負金額2500万円(建築一式工事の場合は5000万円)以上で、建設業法施行令27条1項に列挙された工事を指します。個人住宅を除くほとんどの工事がこれに該当します。
ただし、密接な関係のある2以上の工事を同一の建設業者が同一の場所又は近接した場所において施工するものについては、「専任」の例外とされています(施行令27条2項)。
■工事現場に設置する監理技術者とは
建設業法26条2項は、発注者から直接工事を請け負った建設業者(元請)は、その下請契約の請負代金の総額が3000万円(建築一式工事の場合は 4500万円)以上となる場合、「主任技術者」に代えて、より上位の資格等を有する技術者である「監理技術者」を配置しなければならないと定めています。監理技術者の職務は、施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理及び工事の施工に従事する者の指導監督です。監理技術者は、下請負人を適切に指導、監督するという総合的な役割を担うため、主任技術者より厳しい資格や経験が求められます。
専任の監理技術者になるには、前記の主任技術者の資格等の他、次の2点を満たさなければなりません(26条4項)。
① 監理技術者資格者証の交付を受けている者であること
② 過去5年以内に監理技術者講習を修了していること
なお、工事現場では監理技術者証の携帯が義務付けられており、発注者の請求があったときは提示しなければなりません 。
■ 一式工事についての技術者について
建設業者が、元請業者として、土木一式工事又は建築一式工事を施工する場合で、これらの一式工事の内容である専門工事を自ら施工するときは、その工事現場に専門技術者(主任技術者の資格を有する者)を置かなければなりません(26条の2第1項) 。
この専門技術者は、一式工事の主任技術者又は監理技術者とは必ず別に置かなければならないということではありません。一式工事の主任技術者又は監理技術者が、その専門工事に関し主任技術者の資格を 持っている場合、兼務することができます。
独立しであるいは兼務などの方法で、専門技術者を配置できない場合は、それぞれの専門工事について建設業の許可を受けている建設業者に専門工事を施工させなければなりません 。
また、建設業者は、許可を受けた建設業の建設工事に附帯する他の建設工事(いわゆる附帯工事)を施工することができます。その場合においても、当該附帯工事について専門技術者を配置しなければなりません。自ら施工しない場合は、当該附帯工事について建設業の許可を受けた建設業者に施工させなければなりません(26条の2第2項 。
建設工事請負契約書
■契約締結にあたっての見積りには注意する
ガイドラインのところでも若干触れましたが、見積りについては、以下のような場合には、建設業法20条3項違反となるおそれがありますので注意を要します 。
①元請負人が不明確な工事内容や契約条件など暖昧な見積条件の提示によって、下請負人に見積りを行わせた場合
②下請負人から見積条件の質問を受けた際、元請負人が未回答あるいは暖昧な回答をした場合
③たとえば、予定価格が1000万円の下請契約を締結する場合、元請負人が見積期間を5日として下請負人に見積りを行わせた場合
見積条件を提示する際には、工事内容、条件が明確に提示されなければなりませんし 、見積書作成の期間が十分確保されていなければなりません。見積期間については、以下のように定められています。
ア 工事1件の予定価格が500万円に満たない工事については1日以上
イ 工事1件の予定価格が500万円以上5000万円に満たない工事については10日以上
ウ 工事1件の予定価格が5000万円以上の工事については15日以上
上記基準によれば、③の1000万円は、イに該当し、10日以上の期間を与えなければなりませんので、建設業法違反となります。なお、ここで示されている日数は、最低日数であり、「中10日以上」ということです。つまり、見積条件等の提示のあった日の次の日から10日以上で、見積書提出日は含まれません。
また、予定価格がイ、ウの工事については、やむを得ない事情があるときに限り、見積期間をそれぞれ5日以内に限って短縮することができます(建設業法施行令6条1項、ただし書 。
■請負契約書にはどんなことを記載するのか
契約書面には建設業法で定める一定の事項を記載すること必要です。契約書面に記載しなければならない事項は、以下の①〜⑭の事項です。特に、「①工事内容」については、下請負人の責任施工範囲、施工条件等が具体的に記載されている必要が あるので、「00工事一式」といった陵昧な記載は避けるべきです。工事内容については、少なくとも次の8項目について記載する必要があります。
① 工事内容
ア工事名称、イ施工場所、ウ設計図書 (数量等含む)、エ下請工事の責任範囲、オ下請工事の工程及び下請工事を含む工事の全体 工程、カ見積条件及び施工種の関係部位、特殊部分に関する事項、キ施工環境、施工制約に関する事項、ク材料費、産業廃棄物処理等に係る元請下請間の費用負担区分に関する事項
② 請負代金の額
③ 工事着手の時期及び工事完成の時期
④ 請負代金の全部又は 一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
⑤ 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事
の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の 変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算 定方法に関する定め
⑥ 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の 負担及びそ の額の算定方法に関する定め
⑦ 価格等(物価統制令2条に規定する価格等をいう の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
③ 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
⑨ 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
⑩ 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
⑪ 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
⑫ 工事の目的物の暇抗を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
⑬ 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅 延利息、違約金その他の損害金
⑭ 契約に関する紛争の解決方法
■建設工事標準請負契約約款の活用
建設工事の請負契約の内容に不明確な点があると、後日報酬金額などをめぐってトラブルが生じる可能性があります。
このような事態に備えるため、国土交通省は契約で規定すべき事項
を「建設工事標準請負契約約款」(標準約款)として公表しています。標準約款には、公共約款 、甲約款、乙約款、下請約款の4種類があります。公共約款は公共工事や電力・ガス・鉄道・電気通信等の常時建設工事、甲約款は民間の比較的大きな工事、乙約款は個人住宅などの民間の比較的小さな工事、下請約款は下請工事を対象としています。
■追加での発注が生じた場合には契約を変更するのか
追加工事等の発生により請負契約の内容を変更するときは、追加工 事等の着工前に、変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければなりません (建設業法19条2項) 。
もし、着工前の時点で、「追加工事等の全体数量等の工事内容が確定できない といった事情がある場合、元請負人は、①下請負人に追加工事等として施工を依頼する工事の具体的な作業内容 、②当該追加工事等が契約変更の対象となること及び契約変更等を行う時期、③追加工事等についての契約単価の額、を記載した書面を作成し、着工前に下請負人と取り交わします(建設業法令道守ガイドライン 2 - 2よ り)。この場合、追加工事等の内容が確定した時点で、遅滞なく契約 変更等の手続を行うようにしなければなりません。
なお、元請負人が、合理的な理由がないにも関わらず、追加工事に関する契約変更を行わない場合や、追加工事等の費用を下請負人に負担させることは 、建設業法19条2項、19条の3に違反します。
■下請企業や孫請企業との契約ではどんなことに気をつけるのか
下請業者等との契約においては、前述した建設業法の規定やガイドラインに留意して作成、締結することが必要です。その他、労働基準法、労働安全衛生法などの労働関係法令、独占禁止法など関係法令にも注意しなければなりません。偽装請負で処罰された場合、現行の建設業許可が取り消され、5年 間は建設業許可が受けられなくなりますので、注意が必要です 。
製造業者の工場の建設などの場合、製造ラインや工作機械の配置など企業の重要な秘密に触れることもあります。また、オフィスビルの内装工事ーなどであっても、防犯上の重要な’情報に触れることがあります。このような場合、元請業者としては、情報管理統制上、下請等の建設業者などの使用は控 えるべきです。しかし、やむを得ず下請業者を使う場合は、これらの下請等の建設業者との下請契約の中に、厳しい秘密保持義務や情報管理の秘密保持条項を規定しておく必要があります。
■印紙税を貼付する
印紙税とは、文書にかかる税金です。どのような文書が課税の対象になるかは、「印紙税法別表第一」(課税物件表)に示されています。課税物件によ って分けられ、1号から20号まで全部で20種類あります。この印紙税法上、印紙税が課税される文書を課税文書といいます。請負に関する契約書は、第2号文書として課税文書に該当します。印紙税は収入印紙を貼付する方法で納付します。請負契約に該当する場合は、貼付する印紙は契約書に記載された契約金額によって異なります。
なお、建設工事請負書など、一定の契約書については、印紙税の課税にかかる不公平感がなくなるよう本来の税率より軽減された軽減措置が定められています。この契約書の対象とな る建設工事とは、建設業法2条第1項に基づいており、具体的には以下の工事をいいます(建築物の設計や建設機械に関する契約書等は軽減措置の対象となりません 。
土木一式工事、建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋 根工事、電気工事、管工事、タイル ・れんが ・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、ほ装工事、しゅんせつ工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事 、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施 設工事、清掃施設工事
なお、収入印紙を貼 ることが義務付けられている文書に収入印紙を貼っていない場合、印紙税法上は脱税として過怠税が課されます。過怠税の額は、納付しなかった印紙税の額に加え、その2倍に相当する 金額、つまり当初に納付すべき印紙税の額の3倍です(調査を受ける前に、自主的に不納付を申し出たときは、過怠税は 1.1倍に軽減)。
ただし、印紙税の貼付を忘れたとしてもその文書や契約書自体が無効になるわけではありません。
建設業法・ガイドライン
■ガイドラインの11項目の規定
建設業法令遵守ガイドラインには、11項目が規定されています。規定されている内容について確認します。
① 見積り条件の提示
建設工事の元請負人は、下請負人に見積りを依頼する場合には、工事の内容や契約条件を 具体的に示さなければならないことが建設業法に規定されています。適正な下請負金の額を決定するためには、下請負人にしっかりとした情報提供を行うことで、十分な見積りを提出させるためです。元請負人が下請負人に工事の内容を明確に示さないと、元請負人は建設業法違反となる可能性もあるのです。
元請負人が下請負人に見積りを依頼する場合には、工事の名称、施工場所、下請工事の工程、施工環境といった事項を下請負人に提示する必要があります。また、これらの事項を提示する際には、書面にて行います。
原則として、下請負人の見積り期間としては、工事予定金額 が500万円未満であれば1日以上、500万円以上5000万円未満であれば10日以上、5000万円以上であれば15日以上を確保しなければなりません。
② 書面による契約締結
建設工事の請負契約を締結する当事者は、契約の内容を記載した書面を作成しなければなりません。また、工事の着工前に作成する必要があります。後に請負契約に関しての紛争防止ために、書面の作成が義務付けられているのです。
この書面には、工事内容、請負代金の額、工事着工の時期・工事完成の時期、請負代金の支払方法、工事の施工により第三者に損害を与えた場合の賠償金の負担、工事完成後の検査の時期などについて記載しなければなりません。また、一定規模以上の解体工事を行う場合には、分別解体の方法や、解体工事に必要な費用についても書面に記載する必要があります。追加工事を行う場合にも、その工事の内容を記載した書面を作成する必要があります。この書面は追加工事を行う前に作成しなければなりません 。
なお、書面を作成しなかったとしても、請負契約が無効になるわけではなく、請負契約は成立します。
③ 不当に低い請負代金
元請負人は、自分の地位を不当に利用して、通常必要な原価に満たないほどの請負金額で、下請負人と請負契約を締結してはいけません。下請負人は元請負人と比べて弱い立場にあり、それ故に、不当に低い請負金額での請負契約の締結を強要されても、拒否するのは困難です。下請負人が不利益を被る可能性があるため、不当に低い請負代金での請負契約の締結は禁止とされています。
「通常必要な原価」とは、材料費や現場管理費といった工事を行う際に通常必要な費用をすべて合わせた価格になります。この価格よりも低い価格で請負契約が締結されれば、下請負人が不利益を受けてしまいます。
④ 指値発注
指値発注とは、元請負人が下請負人と十分な協議をせず、元請負人が指定する価格で下請負人に対して請負工事を受注するよう強いることをいいます。指値発注は、建設業法違反となる可能性があります。また、指値発注をする際に、下請負人に十分な見積の期間を与えなければ、この点でも建設業法に違反する可能性があります。元請負人としては、自ら一方的に請負金額を指定するのではなく、下請負人と十分に協議をして請負金額を決定することが必要なのです。
⑤ 不当な使用機材等の購入強制
建設工事を行う際に、下請負人が元請負人から、建設工事に必要な資材等を購入する場合があります。下請負人が自らの意思で元請負人から資材を購入するのはいいのですが、元請負人が下請負人に対して資材等の購入を強制することは禁止されています。
下請負人は、従前から元請負人とは別の業者から資材を購入している場合では。元請負人との力関係上、止むなく元請負人から資材を購入すると、従前から資材を納入してもらっている業者との関係が悪化することもあります。また、他に安く資材を提供する業者があるにもかかわらず、元請負人が高い値段で下請負人に資材を購入させていれば、下請負人は不当に不利益を被ることになります。
それ故に、元請負人が下請負人に対して建築に必要な資材等を購入するように強要することは禁止されています。
資材の購入先の指定は、請負契約の締結前に行われるのであれば、下請負人は見積書に資材の購入代金を反映させることができるため、基本的には問題はありません。逆に、契約締結後に資材の購入先を元請負人に指定されると、下請負人は不測の損害を被る場合もありえます。 なお、下請負人が元請負人から資材を購入することに反対したとしても、元請負人の資材の販売価格が低いのであれば、下請負人に損害が生じないので、元請負人が下請負人に資材等を購入させることは認められます。
⑥ やり直し工事
下請負人の責に帰すべき事由がないにも関わらず、元請負人が下請負人に工事のやり直しを命じることは、原則として禁止されています。元請負人が、下請負人の責に帰すべき事由がないにも関わらず工事のやり直しを求める場合には、元請負人と下請負人との間で十分に協議をしなければなりません。また、工事のやり直しは、新たな請負契約を締結していることになり、やり直し工事の内容を書面にする必要があります。
さらに、下請負人の責に帰すべき事由がなければ、やり直し工事の費用は元請負人が負担することになります。逆に、下請負人の責に帰すべき事由があれば、下請負人が費用を負担してやり直し工事を行います。なお、「下請負人の責めに帰すべき事由」とは、下請負人の行った工事が事前の契約内容と異なる場合や、工事に欠陥がある場合のことを指しています。
⑦ 赤伝処理
赤伝処理とは、元請負人が下請負人に対して下請代金を支払う際に、振込手数料や建築廃棄物の処理に必要になった費用などの諸費用を下請代金から差し引くことをいいます。
赤伝処理は、直ちに建設業法に抵触するものではありませんが、赤伝処理をすることについて元請負人と下請負人の間で合意をしていない場合や 、赤伝処理の内容を契約書の中で明示していない場合には、建設業法に抵触する場合もあります。
③ 工期
工期が変更となった際には、当初の請負契約と同様に変更契約を書面で締結しなければなりません。また、下請負人の責に帰すべき事由がないにも関わらず、工期が変更になって、これに起因する下請工事の費用が増加した場合は、元請負人がその費用を負担する必要があります。これに違反して、元請負人が工期変更に起因する増加費用を下請負人に一方的に負担させることは建設業法に抵触する場合があります。
⑨ 支払保留
下請負人が工事を完成し、目的物を元請負人に引き渡したにも関わらず、元請負人が長期間に渡って下請代金を支払わないような場合には、建設業法に抵触する可能性があります。元請負人が注文者から請負代金の支払いを受けた場合には、1か月以内に下請負人が完成させた建築物の部分に対応する下請代金を、元請負人は支払う必要があります。注文者から支払われた請負代金を元請負人が下請負人に支払う事を促進するために、元請負人には早期に下請負人に対して代金を支払うことが義務付けられています。下請代金の支払期日が、元請負人が注文者から請負代金の支払いを受けた日から1か月を超える日とされている場合には、下請負人は元請負人が請負代金を受け取ってから1か月を経過した時点から、下請代金を請求することができます。
⑩ 長期手形
元請負人が下請負人に対して、割引が困難な手形を用いて下請代金の支払いをすることは、建設業法に抵触します。 具体的にどのような手形が割引困難となるかについては、振出日から支払期日までの期間が120日以上を超えているかどうかが一つの基準です。この期間が120日を超えていれば、割引困難な手形とされる場合があります。
⑪ 帳簿の備付及び保存
建設業者は、営業所ごとに、営業に関する帳簿を備えて、5年間保存する必要があります。その帳簿には、営業所の代表者の名前、注文者と締結した請負契約の内容、下請負人と締結した下請契約の内容といった事項を記載する必要があります。また、契約書の写しなどをこの帳簿に添付する必要があります。帳簿の備付と保存は、元請負人か下請負人かといったことに関係なく、すべての建設業者が行なわなければなりません。
なお、平成21年10月以降については、発注者と締結した住宅を新築する建設工事にかかるものについては、帳簿の保存期間が10年間と規定されています。
建設業には下請法の適用がされない
■どんな法律が適用されるのか
建設業者においては、下請を行ったとしても下請法は適用されません。建設業者が下請を行ったケースでは建設業法と独占禁止法の2つの法律が適用されるのです。建設業に関する取引は建設業法で細かく定められているので、建設工事の下請取引に関しては下請法ではなく建設業法の適用を受けることになります。
建設業者が建設業法に違反する行為を行って、その行為がさらに独占禁止法の不公正な取引方法に該当する場合には、国土交通大臣や都道府県知事は公正取引委員会に必要な措置を講じるよう求めることができます。この要求を受けた公正取引委員会は、不公正な取引方法に該当する行為を行っている建設業者に対して、違反行為の差止などを命令することになります。
■下請取引に関する不公正な取引方法の認定基準がある
公正取引委員会は、建設業の元請業者の行為が不公正な取引方法であると認定するための基準を定めています。次の①〜⑩に該当する行為は不公正な取引方法になるとされています。
① 下請負人が工事を完了してから20日以内に検査を完了しないこと。
② ①の検査によって建設工事の完成を確認した後、直ちに当該建設工事の目的物の引渡しを受けないこと 。
③ 注文者から請負代金の支払いを受けたときに、注文者から支払いを受けた日から起算して1か月以内に、下請負人に下請代金を支払わないこと。
④ 特定建設業者(規模の大きな工事を下請事業者に発注できる建設業者 が注文者となった下請契約における下請代金を、目的物の引渡しの申出の日から50日以内に支払わないこと。
⑤ 特定建設業者が注文者となった下請契約に係る下請代金の支払につき、目的物の引渡しの申出の日から起算して50日以内に一般の金融機関による割引を受けることが 困難な手形を交付し、下請負人の利益を不当に害すること。
⑥ 自己の取引上の地位を利用して、通常必要と認められる原価に満 たない金額を請負代金の額とする下請契約を締結すること。
⑦ 下請契約の締結後、正当な理由がないにも関わらず、下請代金の額を減額すること。
⑧ 下請契約の締結後、自己の取引上の地位を利用して 、建設工事に使用する資材等を指定し、これを下請負人に購入させることによって、下請負人の利益を害すること。
⑨ 建設工事に必要な資材を購入させた場合に、下請代金の支払期日より早い時期に当該資材の対価を支払わせ、下請負人の利益を不当に害すること。
⑩元請負人が①から⑨までに掲げる行為をした場合に、下請負人が その事実を公正取引委員会等に知らせたことを理由として、下請負人に対し不利益な取扱いをすること 。
■ガイドラインの規定について
建設業の下請業については、元詰負人と下請負人の取引が公正に行われることを目的として、建設業法令遵守ガイドラインを設けています。
このガイドラインでは、建設業法に違反することになる事例を具体的に表記しています。ガイドラインでは、11項目の具体例を示しています。
一括下請負の禁止
■一括下請負の禁止とは
建設業法には、「建設業者は、その請け負った建設工事を、いかなる方法をもってするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない」(22条1項)、「建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負った建設工事を一括して請け負ってはならない 」(同条2項)と定められています。いわゆる一括下請負の禁止といわれるものです。
一括下請負が行われると、発注者の受注者への信用を無意味なものにしてしまう危険が生じます。建設工事の発注者が、受注者となる建設業者を選定する場合、通常はいろいろな視点で建設業者を評価します。しかしながら、受注した建設工事を一括して下請業者に請け負わせてしまうと、発注者の評価が無意味なものになってしまい、発注者は不安定な状態に陥ります。また、一括下請負が行われると、建設業界そのものに悪影響を与える可能性もあります。信用に裏づけされていない業者が建設業に入り込むことで、工事の質が落ちたり、労働条件の悪化、中間搾取の発生のみならず、工事能力のないブロカーが請け負う、施工責任があいまいになる、といった問題につながります。
では、そもそも一括下請負とはなんなのでしょうか。通常、請け負った建設工事の全部又はその主たる部分を一括して他の業者に請け負わせる場合は一括下請負に該当します。例をあげると、建築物の電気配線の改修工事において、電気工事のすべてを1社に下請負させ、電気配線の改修工事に伴って生じた内装仕上工事のみを元請負人が自ら施工し、又は他の業者に下請負させる場合などがあります。加えて、請け負った建設工事の一部分であって他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の工事を一括して他の業者に請け負わせる場合も一括下請負に該当します。例をあげると、道路改修工事2km分の工事を請け負い、そのうちの500m分の工事を1社に下請負させるような場合があります。ただし、そのような場合でも、元請負人がその下請工事の施工に 「実質的に関与」していると認められるときは、一括下請負に該当しないのです。
■「実質的に関与」とは
通常は、元請負人として自ら総合的に企画、調整及び指導を行っていれば、「実質的に関与」していると認められます。
というものの、単に現場に技術者を置いているというだけでは「実質的に関与」しているとはいえません。技術者は、主体となって、総合的な企画、調整及び指導を行っている状況でなければなりません。また、技術者には施工管理技士等の国家資格が必要ですあり、技術者と工事を請け負った建設業者との問には、直接的、恒常的な雇用関係が必須です。「在籍出向者」「派遣社員」「短期契約社員」「臨時職員」などは技術者になれないのです。具体的に「実質的に関与」していると判断されるためには、施工計画の総合的な企画、工事全体の的確な施工を確保するための工程管理及び安全管理。工事目的物、工事仮設物、工事用資材等の品質管理、下請負人間の施工の調整、下請負人に対する技術指導、監督等を実際に行っていることが必要です 。
■一括下請負の禁止にも例外がある
一括下請負は禁止とされていますが、一括下請負が許容されるケースもあります。「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」の適用対象となる公共工事は例外なく禁止ですが、民間工事については許されている場合があります。 一括下請負を行う前に、発注者から書面による承諾を得た場合がそれにあたります。(その場合でも 、共同住宅の新築工事については禁止です )。元請人は 発注者から承諾を得ていれば 一括下請負ができるのです。
この場合の発注者とは、建設工事の最初の注文者を指しています。下請負人が請け負った工事について 一括して再下請負で行う場合も、下請負人が最初の注文者である発注者の書面による承諾を受けなければなりません 。
発注者の承諾の書面は特定のフォームはありません。しかし、請負契約書等の中に盛り込んでおくだけでは発注者の承諾の意思表示があいまいですから、別途書面を作成して発注者の承諾の意思表示を明確にしておいた方が好ましいです。
■ 数次の請負や小規模の工事、親子会社聞での取扱い
一括請負の禁止が適用される範囲には制限はありません。ですから、一次下請と三次下請の間でも一括下請負の禁止が適用されます 。
また、すべての建設工事について適用されますから、請負金額が少額でも禁止の対象となります 。
さらに、会社聞に密接な資本関係にある場合(親会社が100% 出資の子会社に下請させるような場合 )でも、適用対象となります 。
建設工事や建設業について
■どのような業務が建設工事に該当するのか
「建設工事」という言葉からは、通常は建物を建設する工事全般を意味する言葉という漠然とした認識をされています。しかし、建設業法では「土木工事に関する工事で別表第1の上欄に掲げるもの」(2条1項)と規定しています。別表第1の上欄には、「土木工事一式」「建築工事一式」「大工工事」「左官工事 といったものの他、「ガラス工事」「造園 工事」「清掃施設工事」など、一見建設工事かどうかわかりにくいものまで28業種(現在は29業種)が掲げられており、その具体的な内容については国土交通省通知のガイドラインなどで示されています。
契約の仕方もいろいろですが、クレーン車のリースやコンクリート打設などの業務に関しては、単価契約という形態をとることがあります。このような契約でも、それが建設工事の完成を目的としているのなら、建設工事の請負契約として取り扱うべきです。
加えて、同一工事の中で複数回にわたって同様の単価契約が締結されるケースでは、すべての請負金額を合算して「軽微な建設工事」に該当するかどうかを判断するのがルールです。
なお、機材のリースや保守点検契約についても、オペレータがついている場合や、設備の機能向上・回復を行うものであれば建設工事の完成を目的とした行為と判断され、建設工事に含まれます。
■ 一般建設業者・特定建設業者とは
建設業の許可は下請契約の金額などにより一般建設業許可と特定設業許可かの2つに区分されます 。
一般建設業許可は工事を下請に出す、出さないにかかわらず、1件の工事代金が3000万円未満(建築一式工事の場合は4500万円未満)の場合に取得する許可です。かたや、特定建設業許可は発注者から直接工事を請け負った工事について、下請代金の額が3000万円以上(建築一式工事は 4500万円以上)となる場合に取得する許可です。たとえば、発注者から2億円の建設工事を請け負った建設業者が下請業者と下請代金1億円の下請契約を締結したケースでは、発注者から2億円の建設工事を請け負った建設業者は特定建設業許可が必要な業者ということになります。
■特定建設業者への規制とは
特定建設業者には下請への発注金額の限度制限がなくなります。しかし、逆に下請業者に対する指揮監督及び下請保護のための特別な規制があります。
① 特定建設業許可の基準
・営業所ごとに専任の技術者を置くこと。
・請負契約を履行するに足りる財産的基礎を有すること。
② 下請代金の支払いの制限
・発注者から支払いを受けた日から30日以内、又は下請負人から引き渡しがあった日から50日以内で、どちらか早い期日内に支払うこと。
・割引困難な手形による支払いの禁止。
③ 発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者の制限
・下請負人への法令順守の指導、違反の是正 、是正されない時の許可 行政庁への通報。
・施工体制台帳及び施工体系図の作成など。
・主任技術者及び監理技術者の設置(特に公共工事では工事現場ごとに、監理技術者資格者証の交付を受けている専任の主任技術者又は監理技術者を置かなければならない)。
・下請負人の従業員への賃金、及び第三者への損害賠償の立替払い。
請負契約とは
■直接指示をすることができない
請負契約とは、シンプルに言えば「他人に仕事をしてもらう」契約のことです。つまり、他人の労務を利用して仕事を完成させ、その対価として報酬を与えるという契約なのです。請負は、業務(仕事)を請け負うことから、業務請負と呼ばれることもあります。契約書の表題についても「業務請負契約書」とされることがあります。次に、請負契約とは、どのような要件を備えている契約なのかを記載します。
最初に、注文者(使用者)が作業従事者に対し、直接指揮命令をしない、ということがあります。作業従事者の個別の作業に対して口出ししたいことがあっても、注文者は直接指示をだしてはいけないのです。請負人の責任者の指揮命令の下で、作業従事者が注文者の意に沿った仕事をすることになります 。ここは、「派遣」や「在籍出向」と大きく異なるところです。
次に、「請負」は仕事の完成が「契約の目的」となります。ここが「業務委託」との違いです。業務委託とは、注文者(委託者)が法律行為(売買や賃貸など)以外の一定の事務処理や業務、手続といったものを委託することです。
請負では、作業場所として請負人の管理下で行われることを原則としています。つまり、請負人の会社で仕事をするということです。注文者から仕事を請けた場合は、自社に持ち帰って仕事をするということになるのです。そして出来上がった完成品を納品するのです。仕入と似ている感じもしますが、仕入との大きく異なるのは、完成品の内容、数量共に完全なオーダーメイドであるということです。それ故に、仕事のプロセスよりも結果が重要になり、請負人は仕事について結果責任を負うことになるのです。要するに請負契約とは、注文者が誰かに仕事を完成させるように依頼する契約であり、作業従事者には直接指示をすることなくに、出来上がるまで、完全に請負人にお任せするという契約になります 。
■請負とみなされるためには
請負とみなされるための要件は、1986年の労働省告示第37号「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準を定める告示」によって定められています。大別すると、「労務管理の独立性 と「事業経営上の独立性」の2つがあります。
労務管理の独立性とは、請負社員に対する作業指示、労働時間の指示や管理、服務規律や配置に関する指示や決定、業務の評価などは、請負会社が行う必要がある、ということを意味しています。
事業経営上の独立性とは、①自己責任で資金の調達、支払いを行うこと、②民法、商法その他の法律上の事業主責任を遂行すること、③単なる肉体的な労働力の提供ではなく、機械、設備、機材などの自己調達による業務処理又は企画、技術、経験上の自己独立遂行性があること、の3点です。請負であるとみなされるためには、これらの要件すべてに該当しなければならないのです 。
■下請契約とは
下請契約は、建設業法で「建設工事を他の者から請け負った建設業を営む者と、他の建設業を営む者との間で当該建設工事の全部又は一 部について締結される請負契約をいう」と規定されています。建設工事を他の者から請け負った建設業を営む者を元請負人、他の建設業を営む者を下請負人といいます。
最初に発注者から工事を請け負った者が、元請負人として発注者とかわす契約を請負契約といいます。その後、元請負人が発注者として、一部の工事を下請に出す場合に、一次下請負人とする請負契約を下請契約といいます。また、一次下請負人が元請負人として 二次下請負人とする契約も同様です。まとめると、下請契約とは建設業を営む者同士の請負契約のことです。加えて、元請負人として、下請契約を行うには、元請負人は建築業法の許可を受ける必要があります。
■下請や一人親方を使うときの注意点
下請契約をする場合は、請け負った工事のすべてを下請にさせることはできません。つまり、丸投げは禁止されているのです (ただし、建設業法では公共工事を除き、発注者が書面で承諾した場合は、一括して下請に出すことは可能としています。)また、工事金額についても注意が必要です。1件の請負代金が500万円以上の建築一式工事以外の工事を行う場合、建設業法上の許可がなければ工事を請け負うことができないため、一人親方に発注することが難しい場合もあります。
労働安全衛生法に違反すると・・・
■どんな罰則があるのか
労働安全衛生法には罰則規定があります。
違反の内容によっては建設業者を含む事業者等に以下のような刑事罰が科せられることもあります。
①7年以下の懲役
製造時等検査や性能検査、個別検定、型式検定の業務(特定業務)を行っている検査・検定機関の役員や職員が、賄賂の受取りなど不正の行為をした、あるいはすべき行為をしなかったとき
②5年以下の懲役
特定業務に従事する特定機関の役員又は職員(役員又は職員になる予定の者、過去そうであった者も含む)が、その職務に関して、賄賂を収受し、要求し、又は約束したとき
①3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
黄りんマッチ、ベンジジン等労働者に重度の健康障害を生ずる物を製造、輸入、譲渡、提供、使用したとき
④1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
・ボイラー、クレーン等の特定機械を製造するにあたって許可を受けていないとき
・小型ボイラーなどの機械を製造 ・輸入するにあたって検定を受けていないとき
・ジクロルベンジジン等、労働者に重度の健康障害を生ずるおそれのある物を製造するにあたって許可を受けていないとき
⑤6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金
・労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、定められた技能講習を受けた作業主任者を選任しなかったとき
・危険や健康障害 、労働災害等の防止に必要な措置を講じなかったとき
・労働者に危険や健康障害を生ずるおそれのあるものを譲渡・提供する際に名称や成分など必要な事項を表示しなかったとき
・労働者が事業場の違反行為を労働基準監督署等に申告したことを理由に、労働者に解雇等の不利益な扱いをしたとき
⑥ 50万円以下の罰金
・厚生労働省令で定められた安全管理者、衛生管理者、産業医などを選任しなかったとき
・労働基準監督署長等から求められた報告や出頭などをしなかったとき
なお、建設業務において上記のような罰則規定に該当していない場合であっても、労働安全衛生法に違反する行為があれば社会的な信頼を失い、労働者等から損害賠償請求を受ける可能性があります。
建設業に従事される方は十分注意してください。。
労働安全衛生法とは
どんな法律なのか
労働安全衛生法とは、職場での労働者の安全・健康を確保し、快適な職場環境を作ることを目的として昭和47年に制定されたものです。そもそもは安全衛生については労働基準法に規定がありましたが、独立した法律にするべき重要性が認められて、規定されたのです。それ故に、同法1条には「労働基準法と相まって労働者の安全と健康を確保すると共に、快適な職場環境の形成を促進する」と定められています。このことは、建設業にも当てはまります。
この法律には、①この目的を達成するために厚生労働大臣や事業者が果たすべき義務や機械や危険物、②有害物に対する規制 、③厚生労働大臣は労務災害を防止するための方策を講じなければならないこと、④ 事業者は労働者の安全を確保するために、安全衛生を管理する責任者を選出しなければならないこと、⑤法に反した際の罰則などが定められています。
どのようなスタッフを配置する義務があるのか
労働安全衛生法は、労働者の安全と衛生を確保するためにいろいろな役割を負ったスタッフを事業場に配置することを事業者に対して求めています。この法律により配置が義務付けらたスタッフや組織には 、総括安全衛生管理者、産業医、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者・衛生推進者 、安全委員会・衛生委員会などがあります。また、建設業など、請負の労務関係で行われる仕事については、「元請から依頼を受けた下請が、さらに孫請に依頼する」というように、階層の深い関係となるので、一般の安全管理体制とは異なる方法の安全管理体制の構築が要求されるのです。
建設業をはじめ会社が講じるべき措置
労働安全衛生法は、事業者が配置すべきスタッフの種類の他にも、事業者が講じるべき措置について規定しています。
まず、機械などの設備により、爆発・発火などの 事態が生じたり、採石や荷役などの業務から危険が生じる可能性がある場合には、それを防止する措置を講じなければならないことを定めています(20条) 。
さらに、ガスや放射能、あるいは騒音といった労働者に健康被害が発生させるおそれがある場合にも、事業者は労働者に健康被害が発生しないように何らかの対策を講じなければならないとされています(22条)。加えて、下請契約が締結された場合には、元請業者は下請業者に対して、労働安全衛生法や関係法令に違反すること がないように指導しな ければならないとされています(29条)。建設業は元請・下請で仕事を進めことが多く、十分配慮しなくてはなりません。
この他にも、事業者が講じなければならない措置として様々なものが規定されています。
安全や衛生について の教育
労働安全衛生法は、事業主が労働者の生命や健康を守るために、労働者に対して教育を行わなければならないことも規定しています。事業者が、新たに労働者を雇い入れたときや、労働者の作業内容を変更したときには、労働者に対して安全や衛生についての教育をすることが義務付けられているのです(59条)。
また、現場において労働者を指導監督する者に対しては、労働者の配置や労働者に対する指導の方法などについて、安全や衛生の観点から教育をしなければならないと規定しています(60条)。
安全衛生については、労働者自身が気をつけることも重要ですので、事業者は労働者を安全衛生の観点から教育する義務を負っているのです。
労働者の健康保持のための検査
労働安全衛生法は、労働者の健康を守るために、いくつかの検査を行うことを事業者に義務付けています。
最初に、人間にとって有害な物質を扱う作業場などでは、作業環境測定を行わなければなりません。作業環境測定とは、空気がどれだけ汚れているかなど、作業を行う環境について分析をすることを意味しています。有害な物質などを扱っている作業場においては、労働者の健康が害される可能性が高く、作業環境測定を行うことが義務付けられています。
また、事業者は、労働者に対して定期的に健康診断を実施しなければなりません。そして、健康診断を実施した後には、診断結果に対する事後措置について医師の意見を聞くことも義務付けられています。
このような検査を経て、労働者の健康が害されるおそれがあると判明した場合には、事業者は何らかの対策を講じることになります。たとえば、作業環境測定により作業場が有害物質で汚染さ れて労働者に 悪影響が生じる可能性がある場合には、新たな設備を導入することで 有害物質の除去を図ることになります 。
健康診断により、労働者の健康状態が悪化していることが判明した場合には、労働時間の短縮や作業内容の変更といったことを検討する必要があります。いずれにしても、検査によって判明した問題に対して適切な措置を講じることが重要となります。
快適な職場環境を形成するために
事業者は、労働者が快適に労務に従事できるよう、職場環境を整えるよう努めなければなりません(71条の2) 。
具体的には、厚生労働省が公表している「事業者が講ずべき快適な 職場環境の形成のための措置に関する指針」が参考になります 。
この指針の中では、労働環境を整えるために、空気環境、温熱条件、視環境、音環境を適切な状態にすることが望ましいとされています。また、労働者に過度な負荷のかかる方法での作業は避け、疲労を効果的に回復するために休憩所を設置すべきことも記載されています。さらに、これらの措置を講じる際は、労働者の意見を反映させ、継続的かつ計画的に取り組んでいくことが必要だとされています。労働者にストレスが生じやすいという現代の状況を踏まえて、労働者が働きやすい環境を作ることが大切なのです。
労働災害防止計画について
労働災害防止計画とは、労働者が事業場で災害に遭うことを防ぐために、労働安全衛生法が厚生労働大臣に対し、策定を義務付けているものです。労働災害防止計画 を策定する際は、まず労働政策審議会の意見を聞きます。その上で社会の変化による労働災害の変化等を反映させ、労働災害の防止のための主要な対策に関する事項その他労働災害の防止に関する重要な事項を規定していくのです。具体的には、以下のような内容が策定されています 。
① 計画の目標 (死亡者数の減少など数値目 標を掲げる )
② 重点施策
③ 重点施策ごとの具体的取り組み
建設業法に違反するとどうなるのか
■監督処分の種類及び処分の公表について
建設業者が、建設業法及び他の法令に違反する不正行為を行った場合、監督行政庁により建設業法上に則り、監督処分が行われます。監督処分とは、不適正な者を正し、又は不適格者を建設業者から排除することを目的として、行政上直接に法の遵守を図る行政処分です。間接的に法律の遵守を図る罰則とは異なります。建設業法上の監督処分には、次の3種類①指示処分、②営業停止処分、③許可の取消処分があります。指示処分(建設業法 28条 1・2・4項)とは、監督官庁が業者に不正行為を是正するためにしなければならないことを命ずるものです。この指示処分に従わないと営業停止処分 ( 同法28条 3・5項)になります。営業の停止期間は1年以内で、監督行政庁がその期間を決定します。なお、刑法や 、一括下請負禁止規定などに違反した場合には、指示処分なしに直接営業停止処分がかけられる場合もあります。
この営業停止処分に従わないと 建設業許可の取消処分(同法 29条、29条の 2)に該当します。指示処分や営業停止処分の対象レベルでも、悪質とみなされた場合は 、指示処分や営業停止処分を経ることなく 、直ちに許可の取消処分となることがあります。なお、不正な手段で建 設業許可を受けた場合も建設業許可の取消処分になります。
監督処分がくだされると、その処分内容が業者名 ・所在地と共に建設業者監督処分簿に記載されます 。国土交通省及び都道府県の閲覧所に 設置されますので、一般の方の閲覧が可能です。加えて、営業停 止処分や許可の取消処分については、その旨が業者名・所在地と共に官報や公報に公告されるのです 。
さらに、前述したような建設業法上の措置以外にも 、大臣許可業者については、営業停止処分や許可の取消処分の情報が 国土交通省のホムページに公表されます。加えて、「建設業者の不正行為等に関 する情報交換コラボレーション システムによって、都道府県 知事許可業者についても、指示処分を含めたすべての監督処分情報がイ ンターネットで公表されます。国土交通省は 、建設業法に違反している建設業者の情報窓口として「駆け込みホットライン 」を設置しており、元請事業者として法令違反の疑いのある行為をしていれば下 請事業者などに告発されるケースもあります。調査後 、違反が発覚すれば監督処分等が行われます 。
■営業停止処分を受けるとどうなるのか
営業停止処分により停止を命ぜられる行為とは、請負契約の締結及び入札、見積り等これに付随する行為です。従って、全業務ができないわけというわけではありません 。例をあげると、新しい建設工事の請負契約を締結 すること、処分を受ける前の請負契約でも追加工 事をすること、新しい建設工事の請負契約の入札・見積り・交渉などをすること、などは 営業停止期間中行うことができない行為です。
しかし、処分を受ける前の請負契約工 事の施工をすること、施工ミスやアフターサービス保証に基づく修繕工事をすること、災害などの 緊急工事をすること 、資金運用・経理関係の事務をすること、許可・ 資格審査の申請などは営業停止期間中でも行うことが可能です。
■罰則が科されることもある
前述した監督処分は、法律を守らない業者を懲罰すること自 体が目的ではないのです 。他方で、違反行為を行う業者には罰則が科されるこ場合もあります。罰則は制裁です 。悪い業者にペナ ルティ を与えることで、 反省を促すことが 目的なのです。
建設業法違反をした場合 、監督処分だけでなく 、罰則を科されるこ とがあります。罰則は違反内容により 変わってきますが、無許可で建設工 事を請け負った場合 、違法行為をした張本人には 、3 年以下の懲役又 は300万円以下の罰金が科され、その本人が働いている 会社にも最高 1億 円の罰金が科されます 。
■指名停止措置や公正取 引委員会の処分
指名停止措置 とは、発注者が、競争入札参加資格登録をしている業者を対象として 、契約の相手方として不適当であると判断した場合、一定期 間、競争入札に参加させない措置です 。不適当な相手であるか否かは、発注者が独自に要領や運用基準を 定めて、それに従って判断して います。建設業法違反もそこに 含まれることもあります。
例をあげると、東京都の指名停止等取扱要綱では 、建設業法を違反し、国土交通大臣又は都道府県知事から営業停止処分を受けたケースでは、東京都発注の契約に関するものに 3 か月以上 9か月以内の範囲で指名停止 を受けます。
また、①不当に低い請負代金の禁止違反、②不当な使用資材等の購入強制の禁止違反、③下請代金の支払違反 、④検査及び引渡し違反 、⑤特定建設業者の手形による下請代金の支払違反 、⑥特定建設業者の下請代金の支払期日違反 、の建設業法違反がある場合、建設業者は 、独占禁止法上の措置を受けること があります(42条 。具体的には 、①〜⑥のような建設業法違反があり、それが独占禁止法19条(「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない 」) に違反していると判断された場合に、独占禁止法上の措置を受けることがあります。
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