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Chapter4 建設業と労働法務について 建設業の法務・労務

建設業と解雇

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■解雇も辞職も「退職」である

労働契約が解消されるすべてのケースを包括的に「退職」といいます。要するに、辞職、解雇も退職の1つの種類なのです。
辞職とは、労働者が一方的に労働契約を解除することを指します。民法上は、2週間前に申し出れば辞職が可能です(民法627条1項)。退職は、主 に使用者と労働者双方の合意に基づいて行われる契約関係の終了で、①労働者が退職を申し入れ、会社がこれを承諾した、②定年に達した、③休職期間が終了しても、休職理由が消滅しない、④労働者本人が死亡した、⑤長期にわたって無断欠勤が続いている、といった事情がある場合に退職手続きはとられます。
退職に関する事項は、労働基準法により、就業規則に必ず記載すべき事項と規定されていますが、その内容についてはある程度各会社に裁量があります。もちろん、建設業の会社にもこのことはあてはまります。

■解雇には3種類ある

解雇とは、会社が会社の都合で社員との雇用契約を解除することを指します。解雇は、その原因により、普通解雇、整理解雇、懲戒解雇に分類されています。整理解雇は経営不振による合理化など経営上の理由に伴う人員整理のことで、一般的にリストラといわれます。一時期の建設業界でもリストラが頻繁に行われていました。懲戒解雇は、たとえば従業員が窃盗のような不法行為をした場合のように会社の秩序に違反した者に対する懲戒処分としての解雇です。それ以外の解雇を普通解雇といいます。
ただし、合理的な理由のない解雇は、解雇権の濫用となり、解雇は認められないとされています(労働契約法16条)。

解雇については法律上、制限があります。ひとつに、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は解雇が禁止されています(労働基準法19条) 。その他にも、労働基準法、労働組合法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法といった法律により、労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇や、育児・介護休業の申出や取得を理由とする解雇など、解雇が禁止される場合が定められています。
また、法律上解雇が禁止される場合に該当しないケースであっても、解雇に関する規定が就業規則や雇用契約書にない場合、経営者は解雇に関する規定を新たに置かない限りは解雇できません。労働契約法で、解雇は、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とするとされています。

■解雇予告手当を支払って即日解雇する方法

社員を解雇する場合、会社は原則として解雇の予定日より30日前にその社員に解雇することを予告しなければなりません。しかし、どんな場合でも30日先まで解雇できないとすると、かなり不都合な場合も出てきます。こうした場合に備えて、その社員を速やかに解雇する方法も用意されています。それは、その社員を即日解雇するかわりに、30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払うという方法です(労働基準法20条)。この方法をとれば、会社は解雇予告を行わずに問題社員を即日解雇することができます。建設業の経営者もこのことは留意してください。
なお、解雇予告手当は即日解雇する場合だけでなく、たとえば業務の引き継ぎなどの関係で15日間は勤務してもらい、残りの15日分の解雇予告手当を支払う、といった形で行うこともできます。いずれの場合であっても、解雇予告手当を支払った場合には、必ず受け取った社員に受領証を提出してもらうようにしましょう。

■解雇予告が不要な場合

会社(もちろん建設業含む)は原則として解雇予告をしなければならないとされています。しかし、次に挙げる社員については、解雇予告や解雇予告手当の支給をすることなく解雇することが可能です。
① 雇い入れてからは14日以内の試用期間中の社員
②日雇労働者
③ 雇用期間を2か月以内に限る契約で雇用している社員
④ 季節的業務を行うために雇用期間を4か月以内に限る契約で雇用している社員
なお、試用期間中の社員について、すでに15日以上雇用している社員を解雇する場合には、解雇予告や解雇予告手当が必要になります。

■ 解雇予告手当の支払いが不要になるケースもある

次ののケースにおいて、社員を解雇する場合は、解雇予告あるいは解雇予告手当の支払は不要とされています。
① 天災事変その他やむを得ない事由があって事業の継続ができなくなった場合
② 杜員に責任があって雇用契約を継続できない場合
①のケースとしては、具体的には地震などの、やむを得ない事由によって、事業を継続することができなくなった場合です。
「やむを得ない事由」とは、事業場が火災により焼失した場合や、震災に伴う工場、事業場の倒壊、類焼等により事業の継続が不可能になった場合などです。
ただし、事業主が経済法令違反のため強制収容され、又は購入した諸機械、資材等を没収された場合や、税金の滞納処分を受け事業廃止に至った場合は該当しません。
事業を継続することができなくなった場合は、事業の全部又は大部分の継続が不可能となった場合のことで、事業の一部を縮小しなければならない場合は含まれません。

かたや、②には、懲戒解雇事由にあたるような問題社員を解雇する場合などがあてはまります。具体的には、重大な服務規律違反、背信行為とは、たとえば、社内で窃盗、横領、傷害といった刑法上罰せられるような犯罪行為を行った場合が該当します。
①や②に該当した場合であっても、労働基準監督署長の認定を受けていない場合には、通常の場合と同じように解雇予告あるいは解雇予告手当の支払が必要になります。したがって、社員を解雇する際に、①に該当する場合には、解雇制限除外認定申請書を、②に該当する場合には解雇予告除外認定申請書を 、管轄の労働基準監督署に提出した上で認定を受ける必要があります。

■解雇の通知は書面が必須

社員を解雇する場合、口頭通知も法的には有効です。ただ、その後の争いを回避するため、書面でも解雇を通知するのがいいでしょう。解雇の通知を伝える書面には、「解雇予告通知書」(解雇を予告する場合)といったタイトルをつけ、解雇する相手、解雇予定日、会社名と代表者名を記載した上で、解雇の理由を記載します。
就業規則のある会社ならば、解雇の理由と共に就業規則の規定のうち、解雇する根拠となる条文を明記し、その社員が具体的に根拠規定のどの部分に該当したのかを説明するのがいいでしょう。即時解雇する場合には、タイトルを「解雇通知書」などとし、解雇予告手当を支払った場合にはその事実と金額も記載するようにします。解雇(予告)通知書に詳細を記載しておくことで、仮に解雇された元社員が解雇を不当なものであるとして訴訟を起こした場合でも、解雇理由の証拠になりやすいです。なお、解雇した元社員から解雇理由証明書の交付を求められた場合には、解雇通知書を渡していた場合でも、交付しなければなりません。
また、解雇の予告期間中に予告を受けた社員から解雇理由証明書の交付を求められた場合にも、交付しなければなりません。

■有期契約労働者の雇止め

雇止めとは、雇用していた契約期間の定めがある労働者(契約社員など)期間の満了により契約を終了させることを指します。有期契約労働者の雇止めは自然退職(一定の事由に該当した場合に労働契約が終了し、退職するものとして扱われること )で、解雇ではありません。
ただし、会社側の雇止めに制限はあります。有期の労働契約が継続して更新されており、労働契約を更新しないことが解雇と同視できる場合や、労働者が労働契約の更新がなされると合理的な期待をもっている場合には、原則として会社側の雇止めは認められません(労働契約法19条)。また、厚生労働省の「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」で、有期労働契約が3回以上更新されているか、1年を超えて継続して雇用されている労働者に対して契約を更新しない場合は、少なくとも契約期聞が満了する30日前までに予告をする必要があるとしています。労働基準監督署は、この基準を基に、使用者に対して必要な助言や指導を行っており、一定の効力をもっています。なお、契約期間途中に使用者が契約を解除することは、雇止めではなく解雇になります。

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