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建設工事の出来高払・竣工払の制約
■建設工事の下請け代金の支払期日のルール
下請人が注文者の立場を利用した行為から保護するために、出来高払・竣工払に対し、建設業法は建設工事の下請け代金の支払期日のルールについて、次のように規定しています。
元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、当該支払の対象となった建設工事を施工した下請負人に対して、当該元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び当該下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、当該支払を受けた日から一月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならない。
1ヶ月以内の支払と規定されていますが、可能な限り早く支払う必要があるのです。
建設業下請工事の検査と引渡し
■建設業下請工事の検査と引渡しには時期の制限がある
請負工事は、
工事施工に着手
↓
建設請負工事の完成
↓
元請人の検査
↓
工事目的物の引渡し
↓
工事代金の請求・支払
の流れがあります。
このプロセスの中で、請負工事が完成しても、元請人の検査・工事目的物の引渡しがなされないと、下請人は工事の対価の支払をうけることができません。
これでは、下請人の経営ひいては、生活をおびやかすことにもなりかねません。このことを考慮して、建設業法では次のように規定しています。
第24条の4
1 元請負人は、
下請負人からその請け負った建設工事が完成した旨の通知を受けたときは、
当該通知を受けた日から二十日以内で、かつ、できる限り短い期間内に、その完成を確認するための検査を完了しなければならない。
2 元請負人は、
前項の検査によって建設工事の完成を確認した後、下請負人が申し出たときは、
直ちに、当該建設工事の目的物の引渡しを受けなければならない。
ただし、下請契約において定められた工事完成の時期から二十日を経過した日以前の一定の日に引渡しを受ける旨の特約がされている場合には、この限りでない。
建設業法における有償支給
■建設工事における下請けへの有償支給
下請負人はその立場のために、経営を不当に圧迫されるような可能性にさらされています。特に支出を工事の請負代金の支払期日前に支払わせるような行為は、下請負人の資金繰りなどに多大な影響をあたえます。
そのリスクからの保護の一環として、注文者が下請工事に必要な工事用の資材を有償にて支給した際は、その対価の支払は下請代金の支払期日以降に支払わせるようにしています。これが所謂、「建設業も下請取引に関する不公正な取引方法の認定基準」に規定されています。
※「建設業の下請取引に関する不公正な取引方法の認定基準」 (昭和47年4月1日公正取引委員会事務局長通達第4号) (改正 平成13年1月4日公正取引委員会事務総長通達第3号)
○資材代金の下請代金の支払日以前の回収
資材代金の下請代金の支払日以前の回収は禁止行為ですが、「下請代金の支払日以前」に他の工事の請負代金から資材代金の額を控除することも禁止行為です。
○資材代金の早期回収が認められるケース
下請負人が、有償支給資材を他の工事に転用、あるいは転売などをするという不正な行為をした場合は、資材代金の早期回収が認められるケースになります。
建設業法における下請けへの工事やり直し
■下請けへの工事やり直しの是非
元請が下請に対して、工事のやり直しの指示をすることは、法律に抵触するのか否かという疑問が生じることもあるでしょう。
基本的に、元請と下請は十分な協議のもとにいかなる工事であるかを共有して、問題なく施工すべきです。
しかしながら、工事施工後に元請が下請に工事のやり直しを依頼するケースもあります。
この際に、下請を不当な行為から保護するために、建設業法は次のように規定しています。
第19条の2
1,請負人は、請負契約の履行に関し工事現場に現場代理人を置く場合においては、当該現場代理人の権限に関する事項及び当該現場代理人の行為についての注文者の請負人に対する意見の申出の方法(第3項において「現場代理人に関する事項」という。)を、書面により注文者に通知しなければならない。2.注文者は、請負契約の履行に関し工事現場に監督員を置く場合においては、当該監督員の権限に関する事項及び当該監督員の行為についての請負人の注文者に対する意見の申出の方法(第4項において「監督員に関する事項」という。)を、書面により請負人に通知しなければならない。
3,請負人は、第1項の規定による書面による通知に代えて、政令で定めるところにより、同項の注文者の承諾を得て、現場代理人に関する事項を、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって国土交通省令で定めるものにより通知することができる。この場合において、当該請負人は、当該書面による通知をしたものとみなす。
4.注文者は、第2項の規定による書面による通知に代えて、政令で定めるところにより、同項の請負人の承諾を得て、監督員に関する事項を、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって国土交通省令で定めるものにより通知することができる。この場合において、当該注文者は、当該書面による通知をしたものとみなす。
■下請負人の責めに帰すべき理由がある場合とは
「下請負人の責めに帰すべき理由がある」と判断されるのは、以下のような限定的なケースです。
①下請負人の施工した工事の内容が契約書の記載内容と異なるケース。
②下請負人の施工に瑕疵等があるケース。
建設業法における下請に対する使用資材・購入先指定の禁止
■建設業法の下請に対する使用資材・購入先指定の禁止について
建設業法の下請に対する使用資材・購入先指定の禁止について、建設業法では以下の規定をしています。
第19条の4
注文者は、請負契約の締結後、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事に使用する資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを請負人に購入させて、その利益を害してはならない。
上記の条文では、1行目の「請負契約の締結後」と書かれています。逆に言えば、締結前は別の話ということになります。
契約締結の前であれば、元請の希望する「資材・その購入先」を指定しても、それをもとに下請が適正な見積もりをして、適正な請負代金にて締結することは可能です。
建設業法における指値の禁止
■建設業法の指値禁止とは
一般的に、商取引において元請が下請に指値をして応じてもらうというケースはよくあることです。
元請も元請時の注文者の希望をある程度了承する必要もあれば、元請の経営状況、経営方針もあるわけですから。
つまり、契約締結まで流れの中で「指値」する行為が、100%法に抵触するというわけではありません。
ただし、元請と下請で話し合いが十分でない、話し合い自体がないというような元請が元請であるがゆえの力を使って、一方的に指値による契約締結をした場合には、建設業法に抵触する可能性があります。
■建設業法に抵触する可能性がある行為
次のような行為は建設業法違反となるかもしれません。
①元請が自分の予算都合をベースとして、下請と協議せずに一方的に下請への発注額を確定し、契約締結したという行為。
②元請が合理的な根拠無しに、下請けの見積書の金額を下回る金額を一方的に確定させ、契約締結したと言う行為。
建設業法の請負金額の妥当性
■請負金額の決定方法
請負金額の決定には、次のようなポイントがあります。
○責任施工範囲
○工事の難しさ
○施工条件
上記を考慮し、妥当な金額が算出されるということが大切なことです。
下請工事を進めるにあたり、下請業者のモチベーションが高いことが「精度の高い工事」の必須条件です。
無理な工期の押しつけ、不当な請負金額では、「精度の高い工事」は担保されないでしょう。
このようなことを踏まえ、建設業法は次のように規定しています。
第19条の3
注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。
「自己の取引上の地位を不当に利用」
元請と下請の関係において、元請に気に入ってもらえなければ仕事が回ってこなくなり、下請の事業経営の悪化につながるような場合では、元請の力が圧倒的に強くなります。
その圧倒的な力を使って、下請けへの工期、工事内容、請負金額を厳しいものにすることが、「自己の取引上の地位を不当に利用」になります。
建設工事の請負は下請法の適用除外
■下請法か建設業法
下請の多い建設業ですが、建設工事の請負については、下請法の対象になりません。
役務(サービス)の提供を営む事業者(親事業者)が、請け負った役務の全部または一部を他の事業者(下請事業者)に委託する取引。なお、建設業者が請け負う建設工事は除かれており、これについては建設業法の定めるところによる(2条4項)。
建設業については、建設業法で定められています。
1 国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が
[第十九条の三(不当に低い請負代金の禁止)]、
[第十九条の四(不当な使用資材等の購入強制の禁止)]、
[第二十四条の三(下請代金の支払)第一項]、
[第二十四条の四(検査及び引渡し)]又は
[第二十四条の五(特定建設業者の下請代金の支払期日等)第三項若しくは第四項]
の規定に違反している事実があり、その事実が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第十九条の規定に違反していると認めるときは、公正取引委員会に対し、同法の規定に従い適当な措置をとるべきことを求めることができる。
建設公共工事の相指名業者を下請にする
■建設公共工事の相指名業者は下請けにできるのか
建設公共工事の相指名業者を下請けにするのは、たいへん悩ましい問題だと思います。一旦は、「競合関係」にありながら、入札後は「元請・下請=協力関係」になるのですから、違和感は否めません。
建設業法においては、この「建設公共工事の相指名業者を下請けにする。」ことに関して禁止してはいません。
しかし、競争入札の指名業者が判明した後、互いに打ち合わせして、どこが受注し、どこがその下請けになるかを決めているのでは・・・
とあらぬ疑念をまねく恐れもあります。
従って、慎重な対応をとる必要があります。
さらに、発注者側で「相指名業者を下請けにすること」を禁止にしているケースもあります。
建設工事の工期
■建設工事の契約上の工期
元請と下請で請負契約を締結する際は、当然「工期」についても定めます。
しかし、諸般の事情で工期が変更されることもあります。この場合にも変更内容を書面に記載し、契約する必要があります。
請負契約の当事者は、請負契約の内容で前項に掲げる事項に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。