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Chapter4 建設業と労働法務について 建設業の法務・労務

建設業と賃金

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■賃金とは何を指すのか

通常は、「賃金」というと「給料」そのものを指します。しかし 労働基準法上の賃金は給料だけでなく、広く「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」とされています(労働基準法11条)。
賃金には直接的な労働の対価のみならず、家族手当、物価手当のように生計を補助する目的のものや、通勤手当のように労働の提供をよりよくさせるためのもの、また休業手当や年次有給休暇中の賃金のように実際には労働しなくても法が支払いを義務付けているものも含まれます。就業規則などに記載された基本給の他、役職手当、時間外手当、家族手当、住宅手当も賃金にあたります。
また、賞与や退職金は、労働協約、就業規則、労働契約によってあらかじめ支給の条件が決められていれば、使用者に支払いが義務付けられることになるので賃金になります。
さらに、結婚祝金、出産祝金、病気見舞金、災害見舞金、近親者死亡の際の弔慰金などの使用者が任意的、思恵的に支払うものも、就業規則などに明確な支給条件が規定されていれば、賃金とみなされます。このように、「賃金」の定義は広いので、建設業の経営者も十分に気をつけてください。

■最低賃金とはなんなのか

賃金の額は使用者と労働者との合意で決定されます。しかし、不景気、会社の経営状況の悪化などで、一般的な賃金よりも低い金額を提示する使用者もでてきます。その場合、立場の弱い労働者は、提示額をそのまま受け入れざるを得ないという状況になり、厳しい生活に陥ってしまいます。そこで、国は最低賃金法を制定し、賃金の最低額を保障することによって労働者の生活の安定を図っています。最低賃金法の対象となるのは労働基準法に定められた労働者(パートタイマーやアルバイト含む)です。たとえば、個別の労働契約で、最低賃金法を下回る賃金を設定していたとしても、その部分は無効であり、最低賃金法の賃金額で契約したものとみなされます。もし、最低賃金法未満の賃金しか支払っていない期間があるのであれば、事業者はさかのぼってその差額を労働者に支払わなければならなくなります。
最低賃金には、①地域別最低賃金、②特定最低賃金(従来の産業別最低賃金)があり、どちらも都道府県ごとに設定されています。これらは、ほぼ毎年改正されています。原則として地域別最低賃金が適用されますが、特定最低賃金と競合する場合は、一般に、金額の高い特定最低賃金が優先して適用されます。なお、試用期間中の者や、軽易な業務に従事している者、一般の労働者と比べて著しく労働能力の低い労働者などについては、都道府県労働局長の許可を得ることによって最低賃金額を下回る賃金を設定することができます。建設業の経営者も最低賃金の定めをしっかり認識してください。

■出来高払制の保障給とは何か

月給制、日給制、時給制などのように一定の期間、日、時間を単位として決まる賃金の支払形態と異なり、出来高払制その他の請負制は、仕事量の変動によって賃金額が大きく変動します。そのため、仕事量が少ないと生活が困窮する事も考えられます。出来高払制は極めて不安定な賃金の支払形態といえます。建設業は、仕事量の変動が比較的でやすい業種と言えるでしょう。
労働基準法では、最低限の生活ラインを維持するための規定を設けています。つまり、労務を提供した以上、その仕事量が少ない場合であっても、一定額の賃金を保障することを義務付けています(労働基準法27条)。この保障給とは、すなわち固定給のことです。仮に労働者の出来高が全くない場合でも、使用者は、労働時間に応じて一定額の賃金の支払いを保障しなければならないというものです。
保障給は、「1時間についていくら」と定める時間給でなければなりません。月、週について定めた場合でも、実労働時間の長さに応じて賃金額が増減されるようなものは、労働時間に応じたものとされます。また、全額請負制だけでなく 一部の請負制についても、請負給に対して保障する必要があります。ただ、賃金構成で国定給の部分が賃金総額の6割程度以上を占めている場合には、請負制に該当しないとされています。

■保障給の支払いが必要な場合

労働基準法27条での保護は労働者が就労した場合を対象としています。したがって、単なる欠勤のように使用者の責任がなく、労働者が労務を提供しなかった場合は、保障給を支払う必要はないのです。
労働基準法の規定では、一定率ではなく、労働時間に対して一定額とされているだけです。具体的に最低額の定めがあるわけではありません。この制度の趣旨を鑑みて、労働者の生活保障のために、通常の実質収入とあまり差のない程度の賃金が保障されるように定めることが望ましいでしょう。行政の見解として、休業手当が平均賃金の100分の60以上の支払いを義務付けていることを考慮すると、労働者が実際に就労している賃金の場合も平均賃金の100分の60程度は保障すべきとされています。
この保障給は「労働時間に応じ」とされていますから、前述したように1時間についていくらと金額を決める必要があります。日や月によって保障給を設定することもできます。しかし、この場合も労働時間の増減に応じて金額が変わるようにすることが必要です。また、時間外労働を行った場合は割増賃金の支払義務も生じます。なお、最低賃金法の適用がある労働者の場合には、その最低保障額以上の支払いが義務付けられています。出来高払制における保障給は、労働時間に応じることになっていますから、最低賃金の時間額が適用されます。

■平均賃金とは何なのか

「賃金」は労働者が働いたことへの対価として使用者から支払われるものです。一方、何らかの事情で働けなかった、あるいは働かなかった期間であっても、賃金が支払われることがあります。
たとえば有給休暇を取得した場合や、労災事故など によって休業した場合などがこれにあたります。この場合、その期間の賃金の額は会社側が一方的に決めるのではなく、労働基準法の規定に基づいて1日の賃金額を算出し、これに期間中の日数を乗じた額とすることになっています。
その基準となる1日の賃金額を、労働基準法上では平均賃金と呼んでいます。平均賃金の算出方法は原則として、「これを算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」(労働基準法12条)により、算出します。平均賃金は、次のような場合に使用されます。
① 解雇を予告するとき
労働者を解雇する際に、30日前に予告をしない場合、使用者は30日分以上の平均賃金を解雇予告手当金として支払うこととされています(労働基準法20条)。
② 休業手当を支給するとき
機械の故障や業績不振など、使用者側の事情で労働者を休業させる場合、使用者は休業期間中、労働者にその平均賃金の100分の60以上の手当を支給することとされています(労働基準法26条)。就業規則等に定めがない場合には平均賃金の100分の60が支給されます 。
③ 年次有給休暇を取得するとき
労働者が年次有給休暇を取得する場合、平均賃金、健康保険の標準 報酬日額、又は所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を用いて算定します(労働基準法39条)。
④ 災害補償をするとき 業務上の負傷や疾病が原因で労働者が休業などをすることになった場合、使用者が補償する賃金について、平均賃金を基準に算定します。
⑤ 懲戒処分の減給額の基準
不祥事などを起こした場合 、会社から懲戒処分として減給処分を受けることもありますが、減給額は1回の処分につき平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、1か月を合計して賃金総額の10分の1を超 えてはならないという制限が設けられています。

■休業手当とは何なのか

労働基準法26条は、使用者の責任による休業の場合、使用者は休業期間中、当該労働者に対し、その平均賃金の60% 以上の手当を支払わなければな らないと規定しています。これを休業手当といいます。
休業とは、労働契約上労働義務のある時間について労働ができなくなることをいいます。一斉休業であっても1人だけの休業であってもかまいません。丸1日の休業だけでなく1日の所定労働時間の一部だ けの休業も含まれます。
休業手当支払義務が発生する休業理由としては、原材料の欠乏、親会社の経営難によって下請工場が資材・資金を獲得できないことによる休業、違法な解雇による休業、流通の不円滑による資材の入手難、機械の検査、監督官庁の勧告による操業停止、などが挙げられます。
一方、天災事変、電休(電力供給がなくなること)による休業、労働安全衛生法に基づく健康診断の結果による休業 、一部労働者のストライキによる他の労働者の休業、法令に基づくボイラー検査などによる休業については使用者に休業手当 支払義務が生じません。
労働基準法の休業手当支払義務は強行法規(当事者間でその規定と異なる特約をしてもそのような特約の効力が認められない規定のこと)ですから、労働者に対する平均賃金の100分の60以上の支払いが保障されており、保障の程度について労使間で100分の60を下回る特約を定めたとしても、そのような特約に効力は認められません。

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