■建設業における偽装請負とは
建設業における偽装請負とは 、実際には発注者側の建設会社が 請負人側の建設会社の労働者を指揮監督するという労働者派遣に該当する行為が行われているものの、発注者側の企業と請負人側の企業との間では請負契約を締結していることをいいます。たとえば、A会社がB会社の従業員を使用したいと考えた場合に、A建設会社が発注者、B建設会社が請負人となって請負契 約を締結し、Aの指揮監督の下でBの従業員を用いることが偽装請負になります。
偽装請負の典型的なパターンは、請負人側の企業は発注者側の企業に労働者を派遣し、発注者側の企業が労働者を直接に指揮命令するというパターンです。
しかし、これ以外にも偽装請負のパターンは存在します。たとえば、 請負人側の企業が さらに別の個人事業主に下請をして、その個人事業主を注文者の下に派遣するという パターンがあります。請負人側の企業は、労働者の代わりに下請契約を結んだ個人事業主を注文者側の企業に派遣しています 。
また、請負人側の企業が、さらに別の企業に下請を行わせて、その企業の労働者を注文者側の企業に派遣するというパターンも存在します。請負人側の企業は、自社で雇用している労働者の代わりに、下請企業の労働者を派遣していることになります。
■何が問題なのか
発注者側の建設会社が請負人側の建設会社の労働者を直接に指揮監督する場合には、労働者派遣法の規制を受けます。ただし、労働者派遣法では、現在のところ、派遣労働者を受け入れることが禁止されている業種が 規定されており、また、派遣期間などの制限もあります 。
このような労働者派遣法の規制の適用を避ける意図で 、請負の形式 で行われる労働者の受入れが偽装請負です 。
偽装請負による労働者の派遣・受け入れを行っている企業は、偽装 請負状態を解消するための措置を講じることが 必要になります 。
まず考えるべき方策は、適法な請負に切り替えるという方法です。 しかし、派遣先の企業が労働者を指揮監督する必要性がある場合には、 適法な請負への切り替えは現実的な対策とはいえません。
次に考えるべき方策は 、適法な労働者派遣に切り替えるという方法です。しかし、発注者側の建設会社の業種が、労働者派遣が可能な業種に該当しない、労働者の派遣可能期間を超えて労働者を受け入れたいといった事情がある場合には、このような方策をとることはできません。
最終的に取るべき手段は 、発注者側の企業が派遣されてきている 働者を直接に雇用するという 方法です。このとき、発注者側の企業は、労働者に一方的に不利にならないような条件で労働契約を締結することが必要です。