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Chapter8 建設業法改正の施行 令和2年10月1日 建設業許可等に関する情報

建設業許可の経営業務の管理責任者

更新日:

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■経営業務の管理責任者とは

建設業許可の要件のひとつに「経営業務の管理責任者」があります。
経営業務の管理責任者とは、その営業所において、営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、建設業の経営業務について総合的に管理し、執行した経験がある者と定義されます。
例えば、法人の役員、個人事業主、令3条の使用人などが該当します。

ここでは、建設業許可を取得されようと考えている建設業者さんを対象に、
令和2年10月1日に施行された「建設業法の法改正」を踏まえて、現在の「経営業務の管理責任者」について記載します。

以下に、
①適切な経営能力を有すること
②適切な社会保険に加入すること
③経営業務管理責任者の役職
④経営業務管理責任者の勤務場所
⑤経営業務管理責任者と専任技術者の兼務はできるのか
⑥経営経験の証明書類
⑦経営業務の管理責任者は略歴を確認される
⑧「経営業務の管理責任者証明書」に記載される人
の8点について、説明します。

■主たる改正の概要

○適切な経営能力を有すること

<イ>常勤役員等のうち1人が以下のいずれかに該当するものであること。
①建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
②建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けたものに限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
③建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として
経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者

【上記の解説】
●従来は許可を取得したい「業種(全29業種)」についての総合的な経営経験が必須とされていたのですが、経験業種は「取得したい業種以外のもの」でもよくなったということです。

 

 

<ロ>常勤役員等のうち1人が次のいずれかに該当する者であって、かつ、財務管理の業務経験(許可を受けている建設業者にあっては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあっては当該建設業を営む者における5年以上の建設業の業務経験に限る。以下このロにおいて同じ。)を有する者、労務 管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を当該常勤役 員等を直接に補佐する者としてそれぞれに置くものであること。
①建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
②5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者

【上記の解説】
●上記の①または②の要件を満足させた上で、
当該常勤役員等を直接に補佐する者を財務管理・労務管理・運営業務のそれぞれの部門に置くことが必要となります。
それぞれの部門に置く補佐する者は重複が可能です。
つまり、1 人から最も多くて3人が補佐する者になるというわけです。
(Aさんが、財務管理・労務管理・運営業務の3つの部門に置かれることでも良くて、Aさんが財務管理、Bさんが労務管理、Cさんが運営業務の部門にそれぞれ置かれても良い。)
なお、当該補佐する者の業務経験は、許可申請を行う会社の建設業に関する5年以上の業務経験が必要となります。

●上記①は、建設業に関し2年以上の役員等としての経験があれば、それに追加し3年の経験については建設業に関し常勤役員等に次ぐ役職上の地位にあった者で可となり、その確認は組織図において社内の組織体系において役員等に次ぐ役職上の地位にある者の確認ができれば要件を満たすことになります。

●上記②は、建設業に関し2年以上の役員等としての経験があれば、それに追加し3年の経験については建設業ではない会社の役員等の確認ができれば要件を満 たすことになります。

 

○適切な社会保険に加入していること 次のいずれにも該当する者であること。

<イ>健康保険法(大正11年法律第70号)第3条第3項に規定する適用事業所に該当する全ての営業所に関し、健康保険法施行規則(大正15年内務省令第36号)第19条第1項の規定による届書を提出した者であること。
<ロ>厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第6条第1項に規定する適用事業所に該当する全ての営業所に関し、厚生年金保険法施行規則(昭和29年厚生省令第37号)第13条第1項の規定による届書を提出した者であること。
<ハ>雇用保険法(昭和49年法律第116号)第5条第1項に規定する適用事業の事業所に該当する全ての営業所に関し、雇用保険法施行規則(昭和50年労働省令第3号)第141条第1項の規定による届書を提出した者であること。

【上記の解説】
●従来は「未加入」でも許可取得が可能でしたが、この法改正によって、加入が必須となります。
その上で、項目上の「加入」、「適用除外」、「一括適用(支店)」の場合が許可されることになります。

経営業務管理責任者の役職

経営業務管理責任者について、建設業法は次のように規定しています。

建設業法第7条第1号

第7条
1.国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
1.建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。

経営業務管理責任者の勤務場所

経営業務の管理責任者とは、その営業所において、営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、建設業の経営業務について総合的に管理し、執行した経験を有した者のことです。
経営業務の管理責任者は常勤で、法人では役員であることが必要です。

それでは、常勤している勤務場所はどこでもいいのでしょうか。
これについては、原則的に本社、本店等となっています。

時折、諸事情により、他県の支店に常勤している役員がいたりしますが、「建設業許可における経営業務管理責任者」は基本的に本社、本店に常勤していなければなりません。

経営業務管理責任者と専任技術者の兼務はできるのか

建設業許可の要件の一つに、「経営業務管理責任者」を置くことがあります。
経営業務管理責任者となるには、
①建設業従事の一定の経験
許可を得ようとする業種と同じ業種なら5年以上、
許可を得ようとする業種と違う場合は、6年以上
の経験が必要です。
②経営の経験
経営経験として、「法人の役員」、「個人事業主」の経験が、原則として必要です。
(上記条件は、緩和されています。経営業務管理責任者要件について

また、営業所ごとに「専任技術者」を置くことも建設業許可の要件です。
専任技術者になる要件は、
①専任であること
その営業所に常勤し、その職務に専ら従事する必要があります。
②資格または実務経験
業種対応した国家資格等を有している、または、実務経験が10年間ある、あるいは、高校の所定学科卒業後5年以上の実務経験、大学の所定学科卒業後3年以上の実務経験があることが必要です。

さて、上記の経営業務管理責任者と専任技術者の兼務はできるのでしょうか。
これについては、それぞれの業務の要件を充たせば、兼務は可能とされています。つまり、本店に常勤する経営業務管理責任者は「本店の専任技術者」を兼務できます。

経営経験の証明書類

経営経験を証明する書類として、
①5年(6年)以上の確定申告書
②①と同期間の「契約書・注文書・請求書の控え」
が必要です。
また、常勤証明として「健康保険証」が必要です。
注)上記は詳細が地域によって違う可能性(ローカルルールの存在)がりますので、都道府県庁の管轄部署に確認が必要です。
注)税務署に申告に出向いた場合の確定申告書の控えには、収受印が必要ですが、以下のように令和7年1月以降は収受印が押印されないこととなり、建設業許可の申請窓口がどのように対応するかを注視する必要があります。

令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて
令和6年1月4日

(概要)
国税庁においては、納税者の利便性の向上等の観点から、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」を目指し、申告手続等のオンライン化、事務処理の電子化、押印の見直し等、国税に関する手続や業務の在り方の抜本的な見直し(税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(DX))を進めているところです。
こうした中、e-Tax利用率は向上しており、今後もe-Taxの利用拡大が更に見込まれることや、DXの取組の進捗も踏まえ、国税に関する手続等の見直しの一環として、令和7年1月から、申告書等の控えに収受日付印の押なつを行わないこととしました。

※ 対象となる「申告書等」とは、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他の書類のほか、納税者の方が、他の法律の規定により、若しくは法律の規定によらずに国税庁、国税局(沖縄国税事務所を含む。)、税務署に提出される全ての文書をいいます。

国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/onatsu/index.htm

経営業務の管理責任者は略歴を確認される

建設業許可の要件のひとつである「経営業務の管理責任者」はその略歴が確認されます。

建設業許可申請の提出書類に「別紙 経営業務の管理責任者の略歴書」という書類があり、これに略歴を記載するのです。

記載内容は、略歴の名の示す通り、その人の職務の変遷です。
新卒時の会社から現在までを正確に記すのが望ましいです。
会社と会社の間のブランクも「求職活動中」などと明らかにしておくほうが明解でいいと思います。

いわゆる職務経歴書に近いので、昇進についても記載します。

経営業務の管理責任者は、経営経験の証明書として、確定申告書、「契約書・注文書・請求書の控え」を提出しますが、その際の法人等と略歴書の法人等に相違がないように正確に記載するようにしましょう。

また、従事した業種なども記載しましょう。管工事の建設業許可を取得する際に、「A会社にて役員となり、管工事の経営に携わる」のような記載があると、説得力があります。

略歴書の記載内容も他の作成書類、添付書類との整合性をしっかりと保つことが大切です。

「経営業務の管理責任者証明書」に記載される人

建設業許可の申請をする際に、「経営業務の管理責任者証明書」という書類に記載して、提出します。
この書類の主旨は、当該人物が経営業務の管理責任者となる「経営経験」を5年(あるいは6年)以上積んでいることを証明者が証明するということです。

この書類には次の3名の名前が記載されます。
①被証明者
本申請により、経営業務の管理責任者となる人
②証明者
被証明者の経営経験があることを証明する人
③申請者
本申請をする法人または個人事業主。

上記を例示すると、
法人Aが申請者で、
その法人の役員B氏が経営業務の管理責任者となり、
その役員B氏の経営経験を以前の勤務先の法人の社長C氏証明する
という場合は、
被証明者=役員B氏
証明者=社長C氏
申請者=法人A
となります。

個人事業主の一人親方A氏が、一人親方としての経営経験を証明する場合は、
被証明者=一人親方A氏
証明者=一人親方A氏
申請者=一人親方A氏
となります。
また、経営経験の証明期間が複数の証明者になる場合は、証明者ごとに
「経営業務の管理責任者証明書」を作成します。
例えば「5年以上の経験」を以前の会社Aで2年半年、申請者となる会社Bで3年を証明する場合は、
会社Aで1枚の書類、会社Bでも1枚の書類で合計2枚が必要です。

■経営業務の管理責任者がいなくなった場合の対処

経営業務の管理責任者は、建設業許可取得の要件です。
そして、経営業務の管理責任者が退職などでいなくなった場合は、許可の効力を失ってしまいます。
したがって、許可を維持したければ、後任となる経営業務の管理責任者を置く必要があります。

それでは、具体的にどうするといいのでしょうか。

○社内で後任者を決める

最も基本的なのは、社内の人材を後任者にすることです。
法人で考えれば、まず常勤役員でなければなりません。
(「準ずるもの」のルールもあります。)
また、許可業種に関し5年以上、許可業種以外の業種に関し6年以上の
経営経験が必要です。現在、社内にいるわけですから、この会社に5年以上常勤役員として勤務していればこの要件は満たしていると言えます。
その場合、証明書類もこの会社での5年以上の期間の確定申告書と同期間中の「契約書・注文書・請求書の控え」を用意する必要があります。

また、以前の職歴において「経営業務の管理責任者になれる要件」を満たしている一般社員を当該会社の役員に昇格させて、経営業務の管理責任者にすると言う方法も考えられます。

○外部の方に当該会社に雇用する

例えば、現在求職中の人で、「経営業務の管理責任者になれる要件」を常勤役員として迎えると言う方法考えられます。

■経営業務の管理責任者の後任者がいない

どうしても経営業務の管理責任者の後任者がいない場合は、残念ですが廃業届を提出する必要があります。

この「廃業」とは会社を終わらせるということではなく、許可を受けていた建設業を部分的に廃止するという意味あいです。

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